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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

 恋人の条件                        10 
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―多くの人間がMr.Rの手で踊らされて…翻弄され、そして…様々な
想いが交錯した三日間は幕を閉じ、そして克哉には以前の日常と…
そして一つ、大きな転機を迎えながら一カ月はあっという間に過ぎていった。
 克哉は頭を下げながら、権藤部長の部屋から出て来て…深い溜息を
吐いていった。

「…ふう、やっぱり…少し緊張したな…。けど、やっと区切りをつける
事が出来たな…」

 克哉は、あの日々が終わってからすぐに辞表を提出した。
 そして明日にはキクチ・マーケティングを後にする事になる。
 その為に自分の身辺整理をしていき…今日は、各部署の今までお世話に
なった人達に挨拶に回っていた。
 克哉の担当していた仕事は一通り後任の人に、無事に引き継ぎ終わっている。

「…今日いっぱいで…ここともお別れか…」

 そう思うと凄く感慨深くなって、同時に寂しさのようなものを感じていった。
 特に本多と片桐など…八課の人々は克哉が退社するのを実に惜しんでくれて、
後ろ髪を引かれる想いがあったけれど。
 皆ともう少し一緒に過ごしたいという未練がジワリと広がっていくが…それを
頭を振って打ち消していく。

(…みんなと一緒に仕事が出来なくなるのは少し寂しいけれど…これはオレ自身が
選んだ道なんだ…。振り切って前に進まないとな…)

 そうして、今日…さっき本多や片桐が言ってくれた言葉を鮮明に思い出していく。

『克哉! お前が会社を辞めたって…いつまでもお前は俺の大事な親友だからな!』

『佐伯君…今まで本当にお疲れ様でした。君がいて頑張ってくれたから八課は
大きく変わる事が出来たし…社内のお荷物部署ではなくなったのですから。
本当にいっぱい働いてくれてありがとうございました』

 その二人の言葉を思い出して、胸が熱くなるのを感じて…瞳が潤みそうに
なっていった。
 本多や澤村もまた…Rの手によってあの三日間の記憶と…そして克哉への
恋愛感情を処理されていた。
 だから表向きは本多との関係は元に戻ったし…澤村という人も、あれから接点を
持つ事は再びなかった。
 本多や太一との友情を、例の薬に踊らされて損なわずに済んだ事を改めて
噛みしめていきながら廊下を歩いていくと…ふと、窓の外に広がる光景が
輝いているように見えて…克哉は足を止めていった。
 今朝は少しの間だけ軽く雨が降った。
 そのせいで柔らかい冬の日差しを浴びて…少しだけ輝いて見えた。

「…もう、この会社から見える風景を見る機会もなくなってしまうんだな…。
そう考えると少しさびしいな…」

 そうして少しだけ切ない表情を浮かべていくと…唐突に背後から声を
掛けられていった。

「…佐伯君か? 久しぶりだな…」

「えっ…! まさか、御堂さん?」

 克哉は予想もしていなかった人物の声を聞いて大慌てで振りかえっていく。
 其処には紛れもなく御堂孝典その人が立っていて…克哉は言葉を失っていった。
 久しぶりに相手の顔を見て、胸の奥が軽く疼くように痛み始めていった。

(あれから一カ月…御堂さんと顔を合わせる事はなかったけど…元気そうだ。
本当に…良かった…)

 なら、Mr.Rはこちらとの約束の通り…御堂からあの三日間の出来事を
消し去ってくれたのだろう。
 その事に対して若干の安堵と、一抹の寂寥感を覚えていきながら…克哉は
御堂と向き合っていった。

「ああ、そうだ。私がこちらの会社まで出向くのは相当に久しぶりの事だがな…。
先日、八課にまた新商品の営業を担当して貰おうと片桐部長に連絡を取ったら…
今日付けで君が退社すると聞いていたからな。プロトファイバーの営業を
担当してもらった時には君に大いに助けて貰ったからな…。一言、挨拶ぐらい
させて貰おうと今日…立ち寄らせて貰った。少し時間を貰えるだろうか?」

「えぇ…大丈夫です。もうすでにオレの担当していた仕事は後任の人に
引き継ぎ終わって…今日は今までお世話になった人達に挨拶に
回っている処ですから。御堂さんにも以前は大変お世話になった訳ですしね。
全然大丈夫ですよ」

 そうしてにこやかに微笑みながら克哉はそう告げていった。
 久しぶりに見た御堂の瞳からは…かつて宿っていたこちらに対しての強烈な
欲望や恋慕の色は見られなかった。
 ごく普通のかつての親会社での上役と、下会社の部下として応対していた。

(…本当にあの人は、御堂さんのあの三日間の記憶を消してくれたんだな…。
少しさびしいけれど…良かった…)

 御堂の顔を見ているだけで、チクリと良心と…以前に抱いた恋心の
芽が疼いているのが判った。
 けれど克哉は其れを表情に出さないように細心の注意を払いながら…
御堂とやりとりを続けていく。

「…わざわざオレの為に、御堂さん自身が赴いて下さるなんて…。
本当にありがとうございます…。お気持ち、凄く嬉しいです…」

「いや、プロトファイバーがあれだけ大成功を収めたのは…営業八課、及び…
君や本多君がどれだけ努力をして成果を出してくれたか…私は良く知って
いるからな…。君のような優秀な人材が辞めてしまうのは大変に惜しいが…
どうしてもやりたい事があるのだろう? それなら…快く見送りたいと
そう思ったのでな…」

「…はい、そうです。決めた事がありますから…その為に、皆と別れるのは
寂しいですが…決断させて貰った訳です。御堂さんとも今後、仕事上で縁を
持てなくなるのは寂しいですが…これからもどうかお元気で。
新たな新商品の方も成功を収められる事を心から祈っていますね」

「ああ…ありがとう。君にそう言って貰えると…凄く心強く感じるな…」

 そういって御堂が優しく微笑んでくれると、つい…引き寄せられるように
数歩、間合いを詰めてしまった。
 けれどすぐに正気になって…慌てて下がっていく。
 その時、御堂の瞳が怪訝そうに一瞬揺れたが…今の行動など、何も
なかったかのように平静な様子でこう告げていく。

「…さて、あまり長く引きとめてしまってもすまないな。私の方もこれから
片桐部長らと新商品の件について打ち合わせをしなければならないしな…。
今日、君に会えて良かった。では失礼させて貰おう…」

「あ、はい…オレも貴方に会えて本当に良かったです…。御堂さん、
どうかお幸せに…心から、そう祈らせて貰います…」

「…ああ、判った。必ず幸せになろう。だから…君、もな…」

 その言葉は、もしかしたら不審に思われるかもと思ったが克哉の本心からの
言葉だった。それを聞いて御堂も少しだけ間を空けてから頷いていく。
 一瞬だけ、御堂の瞳に炎が宿った気がした。
 だがお互いにそれを振り切るように…相手に背を向けて、少しずつ
遠ざかっていく。
 完全に御堂の足跡が遠くなったのを感じると…克哉は堰を切ったように
瞳から涙を零し始めていった。

「ふっ…ううっ…」

 御堂との出来ごとが、走馬灯のように脳裏に浮かんで駆け廻っていく。
 たった三日間だけの、短い恋だった。
 それだけでもこんなにも胸が痛くなるのを感じていった。

(けど…これで良いんだ…。これが、オレの選んだ道なのだから…。
引きとめてしまうよりも…離れてでも、あの人が幸せである事を祈る…。
オレには、あいつがいるんだから…これが正しい道なんだから…!)

 そうして、ポロポロと涙を零していきながら…克哉は祈った。
 御堂がどうかこれから先…心から幸せになってくれるようにと。
 それはかつて短い期間とはいえ恋した人に捧げる、克哉の真摯な
願いでもあった。

―どうかお幸せに…御堂さん…

 そうして、心の中で愛しげに御堂の顔を思い浮かべて…ほんの僅かな
時間でももう一度だけ顔を合わす事が出来て、その言葉を直接
伝える機会が持てた事を…克哉は心より感謝していったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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